古墳四方山話
1.おのPの古墳コラム「ゴーマンかましてよかですか?」
2.ヤマポンの古墳雑感「古墳探訪の計画と実践」
3.M谷エッセイ「ゴマヒゲアザラシのつぶやき」

ヤマポンの古墳雑感「古墳探訪の計画と実践」目次
@古墳探訪の計画と実践 03.8/30
情報収集 足回り・服装・装備など 足回り 服装 古墳周辺の危険生物 その他の装備
古墳の見つけ方 最後に


@古墳探訪の計画と実践 03.8/30


「古墳ムーディーズ」をアップして、はや1年チョット経った。真面目な古墳サイトとは一線を画してマイウェイを歩んでいる独断的なこのページにも、ごく一部の古墳ファンのニーズが少ないなりにもあって、ありがたいことに時たま激励やら御意見・御感想のメールなどを頂くことがある。
頂いたメールには「古墳ムーディーズを見て古墳に目覚めました」といったウレシイ感想と共に、「古墳なんて近畿地方だけにしかないと思っていたのに、北関東にこれほど多くの古墳があったなんて今まで全く知りませんでした」とか、「栃木県がこれほど古墳王国だったなんて目からウロコでした」というような感想が少なからずあった。
正直な話、私の場合も、おのPたちと会を結成して古墳探訪を始める以前に行った事のある古墳なんて、足利市内と佐野市のよく目立つ場所にある古墳数基と太田天神山古墳とさきたま古墳群くらいのもので、不勉強なだけと言ってしまえば身も蓋も無いのだが、まさか自分の生活圏が実は非常に密度の濃い古墳地帯だったなんて全く思いも因らなかったというクチなのだ。
古代への入り口はこのサイトを見ている皆さんの身近にだって、単に気付いていないだけで案外さりげなく転がっているのかも知れないのである。

そんな訳で、タイトルだけ入れて1年以上放置してあったヤマポンコラムは、幸か不幸か「古墳ムーディーズ」を見てしまったせいで古墳に目覚めてしまい、外を歩いているとなんだか古墳みたいな物がチラチラと視界に入るようになり気になって仕方がないという人や、これを機会に古墳見学を始めてみようという人のために、私がここ数年の古墳巡りで体得した古墳探訪のノウハウ(ただし他所の地方のことは全く知らないので適用範囲は北関東に限定)について書いてみようと思う。

情報収集

さて、古墳は何も近畿地方の専売特許ではないということが解ったところで、果たして自分の身近な地域にはどのような古墳があるのか、またはないのか、どなたもまず気になるであろう。これは、ちょっと骨惜しみせずに地元の図書館の郷土資料室に足を運べば簡単に調べることができる。

まず手始めに、どこの都道府県でもかなり大部の通史が編纂されていて、例えば「栃木県史」の場合「通史編1」「原始・古代1」「資料編・考古1」「資料編・考古2」などに県内の主だった古墳についてかなり念入りに記述されているので、まずはそれを調べる。また、各市町村でもたいがい分厚い「市町村史(誌)」が編纂されていて、「原始・古代」の章には「古墳時代」の項目があるので、「県史」で得た情報をもとに古墳がある地域の「市町村史(誌)」を調べていけば、この段階でかなり多くの古墳情報をゲットできるのである。拍子抜けするくらい簡単でしょう? ただしここで「主だった」と言ったのは、「県史」や「市町村史(誌)」の場合はあくまでも通史であり、足利市を例にすると、市史は「近代足利市史」という書名が物語っているように中世から近代の記述がメインで、一般に原始・古代にはそれほど多くの紙幅を割いていないことが多いのである。

次の段階は、足利市を例にすると、市の教育委員会が過去にかなり念の入った文化財の悉皆調査を行っていて、「足利市文化財総合調査年報」や「足利市埋蔵文化財発掘調査年報」といった資料を出しているので、このような資料を探して調べる。この段階の資料は、市町村によって取り組みに相当な温度差があるのでどの市町村にも必ずあるとは限らないが、これらの年報類は古墳に限らず地域の様々な文化財や遺跡について実に詳細に記録されていて、最も面白い資料である。最初はやや専門的で小難しい感じがして取っ付きにくいかも知れないが、チョット慣れてくれば全く臆する程のことはないのでどんどん利用したい。ちなみに私はこれらの資料に当たっているうちに足利周辺の中世の城館址にも興味が湧いてしまったので、この秋以降に古墳巡りの再開と平行して城館址巡りも始める予定でいる。図書館には他にも地域の遺跡や古代史関係の様々な書籍があり、もちろん古墳ガイドのような一般書もたいがいあるはずなので、大いに利用すべきである。

自治体発行の遺跡地図や文化財マップまた、足利市の場合「足利の文化財めぐりマップ」、佐野市には「佐野市遺跡地図(普及版)」という遺跡地図があり、前者は足利市教育委員会、後者は佐野市郷土博物館で分けてもらった。これらは実際の古墳探訪の際に最も役に立つ有力な資料なので、目的の地域の教育委員会などに照会して、入手しておくと良いだろう。

調べた古墳の位置はマップルなどの道路地図に書き込んで、コースを組み立てる。また、必要な資料はコピーして準備しておく。現地で人に場所を尋ねる際に資料を持っていれば不審者に間違えられずに済むし(おのPなどどこからどう見ても不審者そのもの)、後述するように実際大いに役立つ。ちなみにあくまでも興味本位を標榜している当古墳ムーディーズでは、県や地域には特に執着せずになるべく石室のある面白そうな近場の古墳から見て回ることにしている。

それと順番が逆さになってしまったが、この拙文を読んでいるということは当然インターネットに繋がっている訳だから、情報収集はまず手始めに、ここからリンクを辿ってネットサーフしていくと良い。写真と駄文を載せているだけの古墳ムーディーズと違って他の古墳サイトの多くは地図やGPSデータその他の情報を掲載していて極めて親切なので、古墳の選定や場所の特定に大いに役立つはずである。

古墳巡りに行って予定外の古墳(我々は「飛び込み墳」と呼んでいる)を見つけると非常に得した感じがして嬉しいものだが、最初から当てにならない行き当たりバッタリを期待してはダメである。古墳は意外とくどい場所にあることが多いので、綿密に計画を立てていても、すんなりと目的の古墳に辿り着くのはそれほど簡単ではない。土地勘のない地域ならばなおさらで、下調べには念の入れすぎということはないのだ。古墳探訪は何よりもまず情報を収集することから始まるのである。

足回り・服装・装備など

古墳探訪の服装や装備は日帰りのハイキングとほぼ同じと考えれば良い。たかが古墳といえ一歩足を踏み込めば小さいながらも条件は自然の里山とたいして変わらない場合が多い。むしろ人家に近くて気が緩みがちな分、意識して気を引き締める必要があるくらいで、くれぐれも古墳を甘く見ないことである。

足回り

まず足回りだが、古墳探訪にはホーキンスの軽いハイキングシューズ程度のアウトドアに適した靴が良い。ビジネス用の革靴や一般のカジュアルシューズ等の底が平らな靴は非常に滑り易いので極めて危険である。古墳の墳丘は意外と滑りやすく、濡れた泥斜面の場合、意識して注意してもかなり滑るし、復元古墳に多い芝生、特に冬枯れの乾いた芝生も、よく子供が川の土手などで段ボールを尻に敷いて滑ってるけど、あれと同じでツルツルと実によく滑る。

前橋市/中二子古墳の後円部実際に私は、前橋市の大室古墳群にある中二子古墳で、後円部の墳頂からコケて滑落したことがある。古墳の下から一部始終を見ていたおのPは、コケながらも必死にデジカメ(このサイトの写真を撮っているカメラ)をかばって落ちて来た私の姿はなかなか見事だったと言っていたが、デジカメは辛うじて守ったものの、斜面に体を打ちつけた衝撃でメガネが飛ばされてツルの根元からフレームが折れてしまい、それなりの損害は被ってしまった。その日の初っ端にやらかしたアクシデントだったので、その後丸1日、尻から背中まで草の汁と泥まみれの服で、折れたメガネを片手で押さえながら古墳を見て回るのは実にミジメだった。この時履いていたのはナイキのエア何とかというアウトドアには全く不向きのバスケシューズだったので、これはやはり古墳を甘く見ていたために起こるべくして起きた事故だったのである(足回りを甘く見て痛い目に遭ったのは何を隠そうテメーだったという訳です)。

服装

万全の防虫対策・暑くて大変服装について問題になるのは夏場から秋口で、その他の季節は滑ってコケたり、狭い石室に入る際に立て膝を突いたりして泥で汚れてもいいのなら服装は特に問題にならない。
夏場は、特に雑木林型や山林型の古墳には普通の山と同じか場合によってはそれ以上に、棘のある痛い植物が生えていたり毒を持つ危険な生物が多く生息しているので、暑くてもちゃんと靴下と長ズボンをはいて長袖の上着を着込み、軍手をはめ、首にもタオルを巻くなどして肌の露出を極力少なくする。長靴を履くのもマムシ対策に有効である。Tシャツに短パンと素足にビーチサンダルなんていう無防備な出で立ちは極めて危険なので、いくら暑くても絶対にしないこと。夏は危険動植物に加え、木の葉や下草が生い茂って墳丘の形も把握しにくく、古墳探訪には最も向かない季節なのでどちらかと言うとオフシーズンである。

古墳周辺の危険生物

古墳に生息している有毒生物は危険な順にマムシ・スズメバチ・アシナガバチなどその他のハチ・ムカデ(神経毒で咬まれると非常に痛い)・イラガの幼虫(柿の葉によくいる)などの毒がある毛虫・アブ・ヌカカ・ヤブ蚊などが挙げられる。特に危険なのはマムシとスズメバチで、マムシは言わずもがな、咬まれれば死亡するケースもある猛毒の毒蛇なので、咬まれたら即、応急処置として患部よりも中枢側(心臓に近い方)をタオルなどできつく縛り上げて少しでも毒の回りを遅くして、渾身の力を込めて毒を吸い出し、一刻も早く救急車を要請する。スズメバチも刺されどころが悪いと死亡する危険があり、タチが悪いことにこいつらは攻撃的なので石室付近などに巣を見つけたら絶対に近づかず、その古墳はもう冬になるまで諦めるのが賢明である。万一刺された場合はマムシで書いたのと同じ応急処置をして、水道があれば流水で良く冷やしてから薬を塗って、すぐに病院に行く。ハチの毒にはアンモニアは効果が無いことが証明されており、キンカン(アンモニア水が主成分)は効かないので要注意。ハチの毒の解毒には抗ヒスタミン軟膏やステロイド軟膏が有効で、具体的には池田模範堂のムヒアルファS(普通のムヒではなくて少し高い方)が効果がある。ムヒアルファSはもちろん他の虫刺されにも非常に良く効くので常備しておくと良い。

ヤブ蚊は雑木林型や山林型の古墳には夏から秋にかけてどこにでも生息している厄介者で、信じられないような大群で大発生していることがある。もちろん肌の露出を少なくして被害を防ぐのが基本だが、耳や額やまぶたなど僅かな露出部も数にモノを言わせてピンポイントで攻撃してくるし、また、どうしてもデジカメでの撮影は軍手では操作しずらく素手になるので、虫除けジェルや虫除けスプレーは必携である。吊り下げ式の蚊取り線香は歩き回っている時には煙が流れてしまうので効果が薄く、また、石室内で写真を撮る際に煙の筋がストロボの光で白く写り込んで心霊写真みたいになってしまうのであまり具合がよくない。

その他の装備

必携品もうひとつ重要な装備は懐中電灯で、入り口が非常に狭くて内部が真っ暗な石室も実際に少なくないので、絶対に忘れてはいけない必須アイテムである。
デジカメで石室内部の写真を撮る際には構図を決めたりオートフォーカスが正確に測距できるようにするためにも明かりは不可欠で、いつもおのPにマグライトを持たせてカメラアシスタントとしてこき使っているのだが、このアシスタントはカマドウマごときでヒィーーーなどと情けない声を発してそそくさと逃げ出してしまい役に立たないことが多いので、撮影の際には特にヘッドランプがあると両手をフリーに使えてベストである(よく忘れるんだけど)。

装備についてまとめると大体、軍手・タオル・ムヒアルファS・虫除けジェル・虫除けスプレー・懐中電灯(ヘッドランプ)といったところになる。

古墳の見つけ方

さて、以上のように準備万端整えて実際に古墳に出掛けて行くわけだが、古墳探訪も回を重ねていくと古墳ハンターとしての嗅覚が次第に研ぎ澄まされて、視界のほんの片隅に古墳の一部をチラッと捉えただけですぐに古墳を発見できるようになるものである。とはいえ、古墳の中にはかなり見つけにくいくどい場所にある物も実際少なくない。
古墳の中で最も見つけにくいタイプは、郊外の新興住宅地の中にとり残された高さの無い小墳である。新興住宅地の場合、住民も地元の地理や歴史に非常に疎くて人に聞いてもほとんど分からず、無計画な宅地開発で迷路のような袋小路が多いので、現在地も把握出来なくなってニッチモサッチモ行かなくなることがよくある。
それと、起伏の多い里山や丘陵地帯の山林内にある古墳も非常に探すのが難儀である。この場合、人に聞こうにも回りに人家すらないような場合もあって非常に苦戦することが多い。

目的の古墳が発見できない場合、現地の人に聞くことになる訳だが、まずきちんと挨拶をして、あらかじめ用意してきた資料の図版や地図を見てもらいながら尋ねる。聞いた人がそこを古墳と認識していなくても、資料の写真を見て「ああ、誰々さんちの裏の山だね」などと分かったことが実際に何回もあったし、おのPのような不審者そのものの容貌でも不審者に間違えられずに済むというメリットもある(古墳に対するストーカーではあるのだが)。
神社やお寺にある古墳など場所の名前がはっきりしている場合は、だれに尋ねても大抵はすぐに分かる。ちょっとくどくて普通の人があまり知らないような所にある古墳の場合は、酒屋・雑貨屋・プロパンガスや灯油の販売店・郵便配達の人など地域の情報に明るい業種の人に聞くと分かることが多い。

あと、お年寄りに聞く場合には、往々にして「古墳」という単語が通じないことがあり、そんな場合は「古代のお墓」なんて説明しても元々そういう概念では認識していないので、別の単語でアプローチすることになる。私の経験では、群馬・栃木の場合、室(むろ)や塚(つか)あるいは単に山という単語で認識されていることが多い。横穴式石室は「いしむろ(石室)」もしくは石の室となる。
前橋市の大室古墳群の大室という地名は文字通り大きな室だし、富士見村の横室古墳群の横室という地名もおそらく横穴式石室を示していると思われる。また、塚といっても単に土が盛り上がった状態を示しているだけで、塚イコール墓という認識は薄いようである。
若いアンチャンに尋ねても自宅の裏にある古墳が分からなかったという例も実際にあり、やはり年寄りに聞いたほうが数段わかる可能性が高い。「古墳」と言って通じない時は、例えば「横穴式石室がある大きな古墳」だったら「石で出来た室がある大きな塚」といった具合に、室・石の室・塚・山などの単語を組み合わせて聞いてみると良いだろう。

最後に

一方では区画整理や宅地開発などでノーチェック同然で多くの古墳が既に破壊され、残された古墳も大半が放置状態、もう一方では復元整備等で修景などと称して堂々と墳丘の現状破壊が罷り通っているというのが現在の北関東の古墳の実態ではあるが、本来は葺き石ひとつといえども現状変更せず、そのままの状態を保つようにするのが遺跡保存の基本的なルールである。古墳探訪で記念に持ち帰るのは想い出と写真だけにして、ゴミは絶対に捨てないこと。実際には家電ゴミの不法投棄などが多くて非常に虚しいんだけど、少なくとも現状以上には古墳を汚さないようにするのが見学者としての最低限のマナーと言えよう。


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